2013年9月26日木曜日

考察:ステレオ感の出し方についてのアレコレ

またもやお題を頂きました。それから数日経っているわけですが、その間にもSPYの本作業をこなしつつ、このお題に対して色々考えていたわけです。
結構マジメなのです。

肝心のそのお題というのは「パンが決まっているリズム音源をもっと拡げたい」というものでした。

うむ、結論を言えばやっぱり「同じ音源を使うにしても、複数のトラックに分けてミックスするべき」なんでしょう。

前回の記事にも書いたかもしれませんが、最終的なミックスの段階になってハイハットが大きい、バスドラが出すぎてるってことは結構頻繁にありがちです。これを1トラックでやっている場合は、データの方を修正しなくてはならないので逆に手間がかかってしまいますが、独立したトラックであればフェーダーを下げればいいだけ、というのが主な理由です。

以上。
...ではあんまり答えにもなっていないようなのでちょっと趣向をこらして、
「では2チャンネルミックスのループ素材を今風の音に仕上げて使うにはどうすればいいか」
という風に変換して考えてみたいと思います。

今回は結構有益な情報が含まれてると思いますのでお楽しみに。
ではでは早速。
用意したループ素材はDAWにバンドルされていたロック系のドラム素材で、こんな感じの音です。



ステレオミックスではありますが、全体的に定位が真ん中よりで音質もこもり気味。シンバル音を聴くとわかるように残響音もついてます。
ボクの場合、普段こういうループは、打ち込みのドラムにリズム的なゆらぎや空気感を加えたいときにうっすらと足す感じで、ループそのものをメインに組むことはあまりありません。
ただ、今回はこれをメインにしてみようという試みです。

まず、音質と広がり感をだすために、EQでハイを強調してコンプでタイトに引き締め、さらに薄めにリバーブを加えてみます。



さきほどより高音域のシンバルやハイハットが強調されたことで、若干広がったように聞こえます。
ただし全体にリバーブをかけているのでバスドラムあたりの低域がうるさくもなっています。

次に、話題の(笑)マルチバンドダイナミクスを使ってみます。

これは、「低域・中低域・中域・中高域・高域」の5バンドにそれぞれコンプレッサーをかけられるというもので、本来はマスタリングなどの最終仕上げ的に使われるものです。
なにしろその匙加減が難しいもので、ボクにはまだまだ使いこなせません。残念ながら。
ただし、プリセットがいくつか用意されているので、その中から適していると思われるのをかけてみたのがこちらです。



どうでしょう。だいぶ広がりが出てきたように思います。またコンプレッサーを帯域ごとに個別にかけているお陰で、バスドラあたりもずいぶん前に出てきたようです。

ただし。ここはやはりステレオミックスの限界というか、個別にリバーブをかけられないもどかしさは残ります。

さあ、これ以上進むことはできないのか?

...ありました。それも最近流行りの。

M/S処理という方法なんですが、聞いたことあります?
昔現役当時はそんなものはなかったと思うんですが、ざっくり説明すると、「ステレオ定位の音源をミッド(mid)つまり中央とサイド(side)の信号に分割し、それぞれに処理を施すことによりステレオ感や音圧を高める」といった手法のようです。
そう言えばZOOM H2nなどのレコーダーには、Mid-Sideマイクというマイクが採用されていて、この原理を利用してステレオ感をコントロールできるとか。

さて、早速実践してみます。
Studio Oneには「Mixtool」というズバリM/S変換をやってくれるプラグインが付属しているので、今回はこれを使用します。ただ、マニュアルに詳しい使い方がなかったのでGoogle先生にお伺いをたてたりした結果以下の様なルーティングになりました。


まず、①で信号をM/S変換します。パンのLeftにMid成分、RightにSideの成分が生成されます。
これを個別のバス③、④に送ってやります(②で振り分け)。
振り分け先のバスでは、別のプラグインを使って信号をモノラルに変換しています。
そしてそれぞれのバスごとにEQ、コンプ処理を行い、若干Side側のレベルを上げてステレオ感を強調しています。さらに④のSide成分にのみリバーブを加えています。
これらを最終的に⑤のバスに送って、再度M/S変換(今回はデコードになります)し、ステレオミックスに戻します。
文章で書くとちょっとフクザツですが、こうした処理を行った結果がこれです。



ちょっと驚くくらいの広がりを得ることができました。
もちろん、個別のパンをいじることは出来ないのでハットやタムの位置はそれほど変わらないんですが、残響音などの広がりは今までの処理とはひと味違います。また、中央のバスドラ、スネアにはリバーブをかけていない(実際は高音域の成分にはかかってしまっていますが)ので、かなりタイトになっていると思います。

先のマルチバンドとこれを位相メーターで比較するとこんな感じ。

マルチバンドコンプのメーター
M/S処理したもの
それぞれ、縦軸が音域、横軸が左右の定位で、シンバルが鳴った時の画像ですが、かなり広がっているのがわかります。

最後に比較として、これらのミックスにギターやベースを加えたものがこれです。



4小節ずつ、ノーマル、EQ+コンプ、マルチバンド、M/S処理という順番になっていますが、最後のものはかなり今風の音になったのではないでしょうか。

今回はDAW付属のプラグインを使用しましたが、フリーのVSTプラグインだと以下のようなものがあります。

Voxengo SPAN:メータープラグインですが、M/S変換も行ってくれるというもの。使い方はこことかここらへん。
DENSITY MKII:M/Sモード搭載のコンプレッサー。同メーカーのBaxterEQなども。
Arsenal Compressor LE:これもコンプ。LE版なので機能制限があるとか。

と、紹介はしたものの実際に使用したことはなかったりしますが(32bitプラグインだとうちの子は使えないんです。Cubase使えって話ですが)、ご参考まで。

といったわけで、今回はサンプルなんかも気合を入れてアップしてみましたがいかがでしょう。
ふう。

3 コメント:

おーの さんのコメント...

あの…消化しきれません(笑)。
5年後ぐらいにコメントします…。

Kazuyo さんのコメント...

さすがオタクの極み!
タムのリバーブ感とか違って聞こえるけどさ、タムの作った音って深みがないからパスンパスンに聞こえるのはもっとどうにかならないのかなぁ?
特に裏拍子のタムね。
ハイハットは綺麗なんだけど太鼓も低音になるほどチープに聞こえちゃう。
スカーンとパスーンみたいに聞こえちゃう。

Hiro さんのコメント...

うにゃあ。リーダー直々のコメントキタ。
またもやお題でしょうか。

>>おーのさん
やった本人もよく分かってなかったり(笑)
こんなやり方もあるんですね〜って感じでしょうか。

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